2016年度の物理は直近10年間で最も難しく、最難関大学レベルだった。
Ⅰ
単振動を含む二体問題が題材。受験物理のサイトに類題が詳しく解説されている。
問2
問7で台の重心位置を求める為の前準備。
物体は外力を受けなければ重心の速度は一定である(重心運動方程式)。そして面白いことに、これは単振動を含む系の場合も成立するのだ。
運動量保存則を考えると容易に分かる。この法則が二物体間の衝突や分裂以外に利用できる例だ。
初めに小球に速さv0 (運動量: mv0) が与えられているので、全体の速さは (mv0) /(M +m) となる。
問3
問4で、バネが最も縮んだ時の「2体系の速さに基づく運動エネルギー」 を求めるが、この時に小球の速度が台に対して0である事に着目する。
問4
d1 を含む式といえば弾性エネルギーだ。2体系の力学的エネルギーは保存されるので、これを立式する。
t = 0 の時、台の速さは0でなので、速さv0 が与えられた小球の運動エネルギーが2体系の力学的エネルギーだ。そしてバネが最も縮んだ時、「バネのポテンシャルエネルギー」と「2体系の速さに基づく運動エネルギー」の総和が力学的エネルギーだ。
問5
問6(a)で立てた式には台の加速度Aが含まれているので、これを消すために台とバネの間に成り立つ運動方程式を立てる。
運動方程式とは「力の釣り合いの式」である。この問題で力を生み出しているのは弾性力であり、バネの右端が台を押し、作用反作用により釣り合っている。
問6
問7で台の重心位置を求めるが、2体系の重心位置は容易に分かるのに対して小球の重心位置は常に動いているので、これを分析していく。
(a)
(b)では「台に対する単振動のバネ定数」が未知なので、「台を基準とする小球の運動方程式」を立てる。
台とともに動く観測者の立場から考えるので、「台が固定されている」として考えたいところだが、問5のように台には力が掛かっているので慣性力を考慮する必要がある。
(b)
問7で台に対する単振動の変位を表すには角速度を知る必要がある。
単振動をしている事を示すわけだからF = -kx の形で示す。台に対する単振動なので左辺は小球の質量mと台に対する加速度aを用いてmaとする。
角振動数ωを求めるには、 F = -kx = -mω2x と弾性力を角振動数を含む式に変形して解く。
問7
2体系の重心位置の式に小球の重心位置を当てはめる事で台の重心位置が分かる。
小球の重心位置は台の重心位置と単振動の変位に依存しているので、相対位置の式”x -X = d1 sin(ωt) -X0“を立てる。
Ⅱ
問1
問2でローレンツ力を求める上で、F = IBl は使えないのでF = qvB を使う。vが未知なので運動エネルギーを利用して求める。(よく似た式にV = vBlがあるが、これは誘導起電力の式だ。)
問2
選別装置内の電場によって生じるクーロン力(F = qE)と釣り合う逆向きのローレンツ力(F = qvB)が必要。
ちなみにローレンツ力と電磁力は実質的に同じもの。
問4
問5で描くグラフに磁束密度の値を書き込む為には、電極a, bで電流を検出できる磁束密度の範囲を調べる必要がある。
荷電粒子は検出器内の磁場によってローレンツ力が働き、時計回りに曲がる事で電極で検出される。したがって磁束密度の範囲は、「円運動する荷電粒子の半径」と「検出器入口と電極の距離」の関係から導ける。
問5
磁束密度の値の算出に恐ろしく時間が掛かる。本番では誰も完答できなかったと思われる。 磁束密度を記入しないでグラフを書けば部分点を効率的に稼げる。
Z = 1 よりZ = 2の粒子の方がローレンツ力を受けやすく、電極で流れる電流も大きい。煩雑な計算を楽にするため、B = √(2mEad /e) /l とおくと良い。
問6
難問の問5が分からなくても解ける簡単な問題なので飛ばさない様にしよう。
Ⅲ
解答の表現方法は複数あるが、できる限りシンプルな式になるのが良いだろう。
問題の流れがややこしいので、過程毎に圧力、温度、体積の値を整理しておくと非常に便利だ。
問1
(a)ピストンは自由に動くので圧力は一定。温度が2倍なので体積も2倍だ。
(b)この仕事は、ピストンが外部にした仕事も含まれる。定圧変化なのでnCpΔT = nCpT0 、またはΔU +ΔpV = 5/2・nRT と表せる。
問2
(d)密度は「質量 /体積」なので体積に反比例する。この事と状態方程式から、密度は「圧力 /温度」に比例すると分かる。
問3
(f)等積変化なので圧力は温度に比例する。地表面の気温はT0 、シリンダー内の温度は2T0 だ。過程2の温度は、温度の方程式に(d)の式を代入して4T0 /5 である。