高校物理 大学入学共通テスト試行調査(プレテスト) H30年度の解説

問題 & 解答

第1問

熱力学の問題。 問3はピストンの栓を抜いたら内部エネルギーはどうなるかという問題だが、この正答率が非常に低かった。

この問題を解くには「断熱自由膨張」と「ピストンの位置エネルギー」を理解しておく必要がある。

栓を抜いたあと、気体は真空に流れ込むが、この時は膨張すると言っても真空なので力を加えておらず、内部エネルギーは消費しない。これが断熱自由膨張である。

そして、ピストンが自由落下ではなくゆっくりと落ちていくということは、ピストンの位置エネルギーが消費されているということを示唆しているのだ。その位置エネルギーはどこへ行ったか?気体分子の運動エネルギーに転換されたのである。つまり温度が上がるということだ。

これらを総合すると、気体は栓を抜いた後に温度が上がるという直観には反する結果となる。シンプルな設問ながら深い考察が必要な良問である。

第2問

問 2 は相対速度の考え方を理解している必要がある。

まず、「力の平均値」とは「力積(運動量) / 時間」で求められる。

解法1

解法の一つとして、Aの運動量の変化を調べるというものがある。元の運動量が-mvで衝突後にemvになったので、

-mv + x = emv

x = (1+e) mv

と求められ、これをΔtで割ったものが答えだ。

解法2

これはBの運動量の減少分から導き出すものだ。

Aから見たBの運動量は2mv であり、衝突後に(1-e) mv となる。

注意すべきなのはemv ではないことで、それはあくまで「元のAの速度」が基準になっているからだ。これはどういう意味かというと、衝突前のAが速度「-v」だったので、これを追うためのカメラが速度「-v」で走っているわけだ。衝突後もカメラはこの速度で動いており、このカメラを通してBを見ると、「-ev – (-v) = (1-e) v」の速さに見える。

したがって、Bの運動量の減少分は、

2mv – (1-e) mv = (1+e) mv

となり、これ をΔtで割ったものが答えとなる。

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